ぱとすの人

短歌同人誌「ぱとす」に掲載した文章や編集後記を公開します。

2023-01-01から1年間の記事一覧

ぱとす2023年11・12月号後記

この編集後記を書いているのは師走の半ばで、雑誌の発行はほぼ二か月遅れとなりました。隔月刊での発行は難しく、来年から「ぱとす」は季刊になります。 京都の清水寺で毎年発表される「今年の漢字」は「税」に決まりました。私は暑か戦だろうと思っていまし…

『岡野弘彦全歌集』ノート其の五

全歌集の『冬の家族』の続きを読んで感想を記します。 ・のどかなる憩ひを欲ひてこしならず心つつましく寺庭にをり この「大和いづかた」の章は東京を離れて過去の出来事から詠まれた作品が集められています。寺院の固有名詞もいくつかの歌の中に登場します…

ぱとす2023年9・10月号後記

「東京駅11番線ホーム」 ©ナカジマ・ヨシモリ 記録的な猛暑の夏を皆さま無事に乗り切られましたか。暑さ寒さも彼岸までという慣用句はもうこの国で使えないのでしょうか。お彼岸を過ぎてまだこの暑さが収まりません。かつての日本の四季の区分はすっかり崩れ…

川口慈子歌集『Heel』の感想

川口慈子歌集『Heel』(短歌研究社)を読みました。著者の第二歌集です。Heel(ヒール)とはプロレスの悪役のことで、著者は女子プロレスのファンのようです。・Heelにはなれないけれど漆黒のルージュ濃く引く出勤の朝 音楽を大学院の博士課程ま…

ぱとす2023年7・8月号後記

しながわ中央公園のカンナ 東京は今年も昨年と同様に梅雨に雨があまり降らず、ついに梅雨明けとなりました。連日の猛暑ですでに私はギブアップ寸前です。 ほぼ一月遅れの発行となりました。すみません。以前と比べて少なくなったページ数を元に戻そうといろ…

『岡野弘彦全歌集』ノート其の四

・眼を据ゑて我に迫りし学生も疲れ帰りぬ午前三時に(『冬の家族』「しひたぐるまじ」) 昔の学生運動はこんな時間まで真剣にやっていたようです。時代が下がると学生運動の活動は安易なものになり、安倍政権時代のSEALDsに至ると若者が楽しむだけのお…

ぱとす2023年5・6月号後記

「交差点」 ©ナカジマ・ヨシモリ 本年第三号をお届けします。「ぱとす」はこれで二年間雑誌を発行できたことになります。ちょうど二年前の今ごろは、復刊第一号に参加してくれる同人を募っていました。その時に参加してくれた同人のうち何人かは、残念ながら…

『岡野弘彦全歌集』ノート其の参

四か月ぶりに岡野弘彦全歌集のページを開きました。『冬の家族』の続きを読み感想を書き留めます。 ・蒼ざめし耳朶より血しほしたたらせ抱かれてこし自治会学生(「しひたぐるまじ」)・論理ただしくもの言ふ一人たちまちに荒き罵声のなかに揉まれゆく(「し…

ぱとす2023年3・4月号後記

「街のアーティストたち」 ©ナカジマ・ヨシモリ 本年第二号をお届けします。東京はもう桜が咲いています。 本当はもっと早くこの号を出すつもりでした。公私にわたりトラブル続きで時間がなく、今ごろの発行となりました。 短歌同人誌ですから編集後記にも文…

西真行歌集『〈結石〉を神と言おうか』感想

西真行歌集『〈結石〉を神と言おうか』(ながらみ書房)を読みました。著者の西真行さんは「塔」所属の歌人でこれが第一歌集です。 左尿管結石を患うようになってからの二か月間の闘病記として纏められた歌集です。その病の性質から治療においてかなりの苦痛…

ぱとす2023年1・2月号後記

明けましておめでとうございます。発行が少し遅れましたが、本年もよろしくお願いします。 正月明けの最初の三連休に日蓮宗本山の池上本門寺に行ってお参りしました。本門寺に隣接する池上大坊本行寺には日蓮大聖人ご臨終の間というものがあり、そのお堂の前…