畠山満喜子さんから短歌同人誌「萩」10号をいただきました。終刊号なのだそうです。
同人10名の短歌作品の他に随想作品としてエッセイも掲載されています。特に畠山さんは文学等について八つの随筆を発表されており、これが日本の古典文学と近代文学についての畠山さんの教養の幅と深さゆえに記されたとても面白い読み物です。
折口信夫の『死者の書』は私も読んだことがありますが、大伴家持のことが書かれていたことはすっかり忘れていました。小説の一体なにを読んだのだと言われてしまいそうで恥ずかしいです。
また、西行の恋についてその経緯を踏まえて『山家集』所収の2首を引いて解説をされています。西行は中断された恋の経験者であるという理解です。
数ならぬ心のとがになし果てじ知らせてこそは身をも恨みめ
今日ぞ知るおもひ出でよと契りしは忘れんとての情けなりけり
平安時代の西行についても近代の与謝野晶子についても短歌を趣味にする者にとってその作品の理解は欠かせないはずですから、改めて歌はきちんと学ばなければいけないと思いました。成瀬有さんのお名前も私の実家にあった短歌の本や雑誌でたびたび拝見していました。この「ぱとす」も恐れ多いことながら迢空系の短歌会を名乗って雑誌をつくっていますから、私はまったく勉強が足らずもっと歌の本を読まなければと反省しています。
畠山満喜子「オリオン座」から5首。
祖父母、伯父。会ふことなかりし人達の魂むかへせむ老いたる吾は
魂のかたちのやうにまるめたる白玉だんごいくつ供へむ
送り火を隣家の猫も見ておりぬ三日三晩の雨やむあした
仏壇をドールハウスと思ふらし目をかがやかせをさなは見入る
離れ住む子ありて冬のオリオン座いさましくなどあらずともよし
(「ぱとす」令和4年5・6月号に加筆)