ぱとすの人

短歌同人誌「ぱとす」に掲載した文章や編集後記を公開します。

2024-01-01から1年間の記事一覧

挑戦者の歌

「ぱとす」創刊号(昭和53年12月1日発行) 「ぱとす」は昭和五十三年十二月に創刊されて、昭和六十三年九月まで昭和の終わりに十年余り発行された同人誌です。始めは隔月刊で発行され、後に季刊となりました。この十年は第二次オイルショックからバブル期ま…

ぱとす2024年冬号後記

北国の華 ©ナカジマヨシモリ 今年最後のぱとすをお届けします。もっとページを増やしたかったのですが、年内に確実に雑誌を出すことを優先しました。来年はこの倍の四十ページぐらいの厚さにすることが私の希望です。 表紙の絵は前号に引き続きナカジマヨシ…

石邉綾子歌集『イヴォンヌのうた』感想

石邉綾子第一歌集『イヴォンヌのうた』の感想を書きます。 ・かなしみは私だけではないのだと少し歪んだ満月の夜 自分がネガティブな感情にとらわれたとき、自分固有の感情ではなく他人も同じように苦しむと思うことでその感情がやわらぎます。そこで見た満…

松田愼也歌集『出で立つ』感想

松田愼也第三歌集『出で立つ』の感想を書きます。 ・海の辺の丘の日暮れをなごましめ大きプロペラ巡るゆるらに 海に近い丘に立つ風力発電のプロペラがゆったりと回っている風景を詠まれています。 ・空あおく澄み透りたる年始なり未曾有の不況と世界はさやげ…

中川宏子歌集『かぼちやに変はる』感想

中川宏子第三歌集『かぼちやに変はる』の感想を書きます。 ・太陽の手、月の手星の手あらはれて幼きわれの髪を直しぬ 天体とのつながり、大きな存在とのつながりを願う心の表現でしょうか。しかし手を伸ばすその相手は現在の中川さんではなく幼いころの中川…

ぱとす2024年秋号後記

ヨコスカの海が見える(作画・ナカジマヨシモリ) 前号から少し間が空きましたが、「ぱとす」秋号をお届けします。九月に入ってもまったく猛暑が収まらずどうなることかと思いましたが、この編集後記を書いている九月下旬にはようやく気温が下がりました。暑…

『岡野弘彦全歌集』ノート其の八

・ひたすらに独りを欲りす墓の砂乾きしるきに面むけがたし(「葬りののち」)・み葬りののちひとり来て仰ぎをり随身門のうつばりの塵(「葬りののち」)・額の痣あをきほむらとなりて燃ゆる怒りの前に一夜わが坐し(「葬りののち」)・師が一生あまりさびし…

ぱとす2024年夏号後記

早朝の小池公園 「ぱとす」夏号をお届けします。前号より少し歌の数が減りましたが、文章が増えましたので今号も二十ページの雑誌をつくることができました。 表紙の写真は東京都大田区にある公園で、すぐ近くに私の事務所があります。それでよく散歩に行っ…

『岡野弘彦全歌集』ノート其の七

・しづまりし湖のみぎはのさざ浪に月照りてくるを見てい寝むとす(「さざ浪の国」)・近江の湖塩津の浦に寄る波のさゐさゐとしてさびしき真昼(「さざ浪の国」)・早苗田の棚田のなかを流れゆく八田部の川の瀬の音すみくる(「さざ浪の国」)・水底の藻草の…

ぱとす2024年春号後記

本年の「ぱとす」第一号をお届けします。今年から雑誌「ぱとす」は季刊になりました。復刊から二年半、隔月刊で発行してきましたが、つくづくこの雑誌が嫌になりました・・・・・・というのはウソで、バックナンバーをつらつら眺めるとまるで我が子のように愛しく…

『岡野弘彦全歌集』ノート其の六

・猩々木道をうづめて咲きつづく名護の入江に人を訪ひきつ(「妣の島」)・ベトナムへたちゆく兵に犯されし女の末を憤りいふ(「妣の島」)・言ふことはつたなけれども老いびとの歎くまなこの澄みてはげしき(「妣の島」)・仏桑華くれなゐふかく咲き垂るる…