私は秀歌をあまり読んでこなかった気がしますので、『岡野弘彦全歌集』の読み込みを続けて少しきちんと短歌を学んでいきたいです。
・月蒼き夜半にいできて連翹の花むら燃ゆる庭に立つなり(「花」)
・妻子らにかかはる憂ひ耐へきつつあまり明るし連翹の花(「花」)
連翹は春に咲く黄色い花です。よく見かける花ですが、私は今回ネットで調べてその名前を知りました。一度にたくさん燃えるように咲いて、本当に明るい印象の花です。私はずっと独り者ですから、家族を持っていることを憂いなどと言うのはうらやましく贅沢な悩みだなあと思いました。連翹の花言葉は希望です。
・悲しみを知りそめし子に「銀の匙」読みきかせをり妻はなごめる(「病める金魚」)
死にそうな金魚が心配で元気をなくしてしまった長男に、妻が中勘助の小説を読み聞かせたという歌です。「銀の匙」は私は大人になってから読みました。確か家を出ていく姉との別れで小説が終ります。岡野氏の妻の暖かい対応とは対照的に、岡野氏は長男を次のように教育したようです。
・故もなく闇をおそるる長男を叱りつつ夜の庭に立たせぬ(「病める金魚」)
(「ぱとす」令和4年11・12月号より)