ぱとすの人

短歌同人誌「ぱとす」に掲載した文章や編集後記を公開します。

ぱとす2023年9・10月号後記

「東京駅11番線ホーム」 ©ナカジマ・ヨシモリ

 記録的な猛暑の夏を皆さま無事に乗り切られましたか。暑さ寒さも彼岸までという慣用句はもうこの国で使えないのでしょうか。お彼岸を過ぎてまだこの暑さが収まりません。かつての日本の四季の区分はすっかり崩れてしまいました。

 九月二十二日に講談社ビルの会場で行われた短歌研究賞、短歌研究新人賞、現代短歌評論賞、塚本邦雄賞の授賞式に出席しました。コロナ禍でこの数年は受賞式が開催されなかったため、第五十六回から第五十九回の各賞の授賞式を今回まとめて一度に開催されたようです。
 授賞式でいただいた冊子には現代短歌界の中心で綺羅星のごとく活躍される受賞者の皆さんの華々しい経歴が記されており、彼らに憧れる気持ちとともに、此岸と彼岸の間に横たわる川の存在を身にしみて感じた一夜でした。大乗仏教ではこの川は誰もが渡れると教えるわけですが、実際のところ私たちは此岸で名もない歌人として一生を終えるのが普通のことですから、あまり無理せず自分らしくほどほどに歌を楽しんでいきたいです。

 畠山満喜子さんに「はるにれ」夏号をいただきました。畠山さんはここで「杳く懐かしき人々――短歌に遊んだ紳士」と題して今年の春に亡くなった江沼半夏さんを追悼する文章を書かれています。江沼さんは久泉迪雄さんが主宰されていた綺羅短歌会の同人で、令和三年に解散した日本短歌協会の会員でもありました。私は日本短歌協会の出版物の製作を担当していたとき、何度か江沼さんから原稿を頂いたことがあります。謹んで哀悼の意を表します。

 来年以降の「ぱとす」が進んでいく方向の軌道修正を検討中です。

(「ぱとす」9・10月号より)

 

ぱとす9・10月号表紙