ぱとすの人

短歌同人誌「ぱとす」に掲載した文章や編集後記を公開します。

『岡野弘彦全歌集』ノート其の四

・眼を据ゑて我に迫りし学生も疲れ帰りぬ午前三時に(『冬の家族』「しひたぐるまじ」)
 昔の学生運動はこんな時間まで真剣にやっていたようです。時代が下がると学生運動の活動は安易なものになり、安倍政権時代のSEALDsに至ると若者が楽しむだけのお祭りと化しました。

・若者の罵声に耐へて帰りこし我にやさしき長男のしぐさ(『冬の家族』「しひたぐるまじ」)
・心たかぶりてい寝がたきゆゑ幼な児と将棋をさしてい寝むとすなり(『冬の家族』「しひたぐるまじ」)
 岡野氏は言わば体制側の人間として六十年安保闘争を経験しました。苦しいのは学生も教師もお互い様だったようです。

(「ぱとす」令和5年5・6月号より)